こんな方におすすめ
- 小学校における給食時間の「もぐもぐタイム」の取り組みを知りたい
学校の給食で一定の時間、黙って食べることに徹する「もぐもぐタイム」。すべての小学校で実施されているわけではありませんが、実施する学校が増えている、と言われています。
もぐもぐタイムは賛否両論で、保護者から不安の声もあがっています。
今回は、そんなもぐもぐタイムについて詳しく解説します。
そもそも給食とは?
そもそも給食は明治22年(1889年)に山形県で、貧困のため昼食を持ってくることができない子どものために始まった制度です。
現代では、そのような子どもはいないのでは?と思う方もおられるかもしれません。
しかしながら、厚生労働省の国民生活基礎調査(2019年)によると、子どもの貧困率は13.5%で、実に7人に1人が貧困状態にあります。
40人のクラスでは約6人が貧困家庭の子どもになる勘定です。
昔とは異なり、現代の貧困は「見えない貧困」と呼ばれております。世間的にはあまり知られていませんが、夏休みになると昼食を食べることができない子どももいるようです。
給食はそんな子どもにとっては、健康や命にかかわる重大な制度です。だからこそ、子どもには給食を負担に思うことなく、楽しんでしっかりと食べてもらいだいものです。
もぐもぐタイムとは?
一般的には「もぐもぐタイム」は、2018年の平昌オリンピックで女子カーリングの選手が、試合中の休憩時間にお菓子や果物を食べたことから、食事やおやつを食べる時間という意味で使われています。
学校給食においては、もぐもぐタイムは「給食を私語をせずに黙って食べること、食べる時間」のことで、「かみかみタイム」や「ぱくぱくタイム」と呼ばれているところもあります。
もぐもぐタイムは、2005年に成立した学校給食法で食育が勧められたのがきっかけで、全国の小学校に広まっています。
食育とは、食に関する知識と食を選択する力を習得し、健全な食生活を実践できる人間を育てることです。
もぐもぐタイムは強制ではないので、その時間がある学校とない学校があります。内容も小学校の担任に一任されているところが多いので、「私語は一切禁止」「はじめの5分のみ」など、学年やクラスによって違う場合もあります。
2019年に広島市内の全142の小学校にアンケート調査を行った結果、回答をした106の小学校では「設けている」「一部の学年やクラスで設けている」が71.7%に上がっています。
もぐもぐタイムの目的
もぐもぐタイムの目的には、以下のことが挙げられています。
- 食べ残しを減らす
- 完食率を上げたい
- 静かに食事ができる環境にしたい
- 咀嚼(そしゃく)力を上げて消化をよくする
- 食べ物を大切にする気持ちを育てる
- 栄養をしっかり摂らせる
- 「口に食べ物を入れたまま話すと、食べ物をこぼしたり飛ばしたりして不衛生なので、止めさせたい」「口に物を入れて話さないのはマナーなので、子どもにも教えたい」といった声もあります。
もぐもぐタイムの効果は?
では、実際にもぐもぐタイムを行うと効果はあったのでしょうか?現場では以下の声が挙げられています。
- 席を立ってウロウロする子どもが減った
- 食べ残しが減った
- 咀嚼力が上がった
- 集中して食べるようになった
もぐもぐタイムは賛否両論
こうした結果だけ見ると、相応の効果が上がっているように見えるもぐもぐタイムですが、実際には賛否両論でさまざまな意見が飛び交っています。
とくに多く見られるのが「子どもが給食の時間を嫌がるようになった」「食事は楽しく食べさせたいので賛成できない」といった保護者からの声です。詳しく見ていきましょう。
会食恐怖症になる恐れがある
学校給食の時間は40~45分、配膳や片付けの時間に20分かかるので、食べる時間は20分程度しかありません。たしかに話すことに時間を取られると、食べる時間が少なくなってしまいます。
低学年の子どもはその傾向が強く、また食べる速さが遅い子どもも多いので、食べ残しを防ぐ、という観点からは、もぐもぐタイムはとくに効果があります。
でも、子どもによっては黙って残さず食べなくてはならない、というプレッシャーから緊張して食べ物がのどを通らなくなったり、胃腸の動きが悪くなったりする子どももいます。
会食恐怖症とは、人前での食事ができなくなる症状のことです。発症のきっかけは給食、という人は数多く見られます。
日本会食恐怖症克服支援協会の山口健太氏のもとには、もぐもぐタイムをめぐるトラブルで「不登校になった」「給食を人と同じように食べることができない」という悩みをよせる子どもが増えているそうです。
工夫をこらしている学校や学級も多い
学校側としても、「子どもに負担なく給食を食べてもらいたい」と、工夫をこらしているところも数多く見られます。
いちばん多いのは、もぐもぐタイムを給食時間のすべて実施するのではなく、最初の5分だけ、10分だけ、とする方法です。
限られた時間で食べると楽しむを両立させるために、はじめの5~10分は私語をつつしみ集中して食べ、残りの時間はクラスメイトと楽しく話しながら食べる、というやり方です。
給食の時間があと10分長ければもぐもぐタイムの必要がない、と考えて4時間目を早く終わったり、配膳方法に工夫をしたりして10分を捻出している学校もあります。
でも、「授業時間が減る」「下校時間が遅くなる」との声があり、もぐもぐタイムをできない学校もあるようです。
食育は家庭での取り組みも重要
保護者や有識者からは、食事や睡眠、排泄などの個人的な問題を公的に支配するのはおかしい、と言う声も挙がっています。
食事は、楽しく食べると食も進み、消化もよくなります。みんなで食べると苦手なものを食べることができることもあります。子どもには同級生と話しながら、楽しく給食を食べさせたいものです。
健全な食生活を実践する食育は、小さいころからの家庭での取り組みも大きく影響します。
楽しく話しながら食事をすることは大切ですが、騒ぎすぎて人に迷惑をかけたり、食事が満足に摂れなくなったりしないように教育するのは、もともと家庭の役目です。
家庭でも、楽しく食べることはもちろんのこと、食べ物の大切さやマナーをしっかりと教育すれば、もぐもぐタイムをなくしたり減らしたりすることができるのではないでしょうか?
子どもに負担をかけない楽しい給食を
給食は子どもの健康を育むために大切な制度です。
もぐもぐタイムは、子どもが給食をしっかりと摂ることができるようにできた制度ですが、子どもにプレッシャーを与えて、給食や学校が嫌いになっては本末転倒です。
学校と家庭が協力して、子どもに負担をかけずに楽しく給食を食べることができるようになることが望まれています。
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