こんな方におすすめ
- 小学校で必修化された英語の内容や実態が知りたい
- 小学校の英語のために家庭でできることを教えてほしい
2020年の新学習指導要領により、小学校での英語が必修化されました。
それまでも総合の授業内で外国語活動として取り組むこともありましたが、教科として必修化はされていませんでした。
そこで、今回は英語が必修化になった目的や授業内容の実態などについて解説します。
家庭でできる英語学習の方法もご紹介します。
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小学校での英語が必修化された背景と目的
文部科学省は、以下のような背景と目的で小学校英語を必修化しました。
英語は、国際的共通語として最も中心的な役割を果たしており、コミュニケーションのツールとなっている。世界では英語を母語、公用語、準公用語とする人々が多い。21世紀を生き抜くためには、国際的共通語としての英語のコミュニケーション能力を身に付けることが不可欠である。
(中略)
こうしたなか、例えば我が国のTOEFL(トーフル)の平均スコアはアジア諸国の中で下から2番目に位置している。受験者の数や特性が異なるため単純な比較はできないが、日本人の英語運用能力は国際的に見て十分でないことを示すものであるという指摘もなされている。日本人自身の一層の国際化及び国際社会で活躍する人材の養成のために、国家戦略として英語教育の充実を図る必要がある。
グローバル化がすすむ社会で「英語の習得」は欠かせないものでありながら、実際は十分な成果があげられていないという背景があったようです。
そこで、より英語教育をより充実させることを目的とし、英語が必修化となりました。
さらに、「教育の機会均等」という観点からも小学校の英語教育を必修化する意義があります。
2020年の英語必修化より前でも、93.6%の小学校で何らかの形で英語教育(英語活動)が実施されていました。
しかし、授業の内容が小学校によって異なり、習得状況もばらばらだったため、中学校に進学した時に英語の基礎から学び直さなければいけないという非効率的な状況でした。
小学校での英語が必修化されることで、中学校に入るまでに均等に英語教育することができるので、中学校以降のよりレベルの高い英語がスムーズにスタートできます。
小学校の英語必修化の内容や実態
小学校英語の内容や実態について見ていきましょう。
3・4年生は成績がつかない「外国語活動」、5・6年生は成績がつく「教科」として扱われます。
小学3.4年生の英語
3年生と4年生は、学級担任による年間35単位時間の英語授業があります。
つまり、長期休みを除いて1週間に1コマ(45分)程度です。
英語を学ぶというよりも、「英語に親しむ」という目的でコミュニケーション能力を重視した授業が行われます。
「教科」ではなく「外国語活動」として扱われ、通知表などに成績はつきません。
具体的には英語でのクイズや歌、ダンスなどを中心とする「活動型の学習」になります。
「書く」や「読む」よりも「聞く」「話す」を重視し、簡単な挨拶や会話などが中心です。
小学5.6年生の英語
5年生と6年生は年間70単位時間、1週間に2コマ(90分)程度の英語授業があります。
1コマを「15分×3回」に分け、「最初の15分間は英語の時間」などとして70コマの授業時間を確保している小学校もあります(モジュール授業)。
文部科学省検定による教科書を用いる「教科」として扱われるため、成績評価の対象です。
学級担任の他、英語専門の専科指導の先生、ネイティブスピーカーの指導者などが授業を行います。
授業内容は「英語によるコミュニケーションスキルの基礎を養う」ことを目的としていて、3.4年生よりもより実践的な内容です。
また、3.4年生はおもに「聞く」「話す」の2技能に関する活動でしたが、5.6年生は「読む」「書く」という技能も加わってきます。
言語習得に必要なのは、「話す」「聞く」「読む」「書く」の4技能です。
疑問詞、代名詞、助動詞、動詞の過去形などにも触れ、2年間で300~600程度の語彙を習得するのが目標です。
小学校の英語と中学校の英語の違い
小学校の英語は、中学の英語と比べて「コミュニケーション能力」を養うことに重点を置いています。
高学年になると文法や単語のスペルについても触れてはいきますが、知識よりもコミュニケーションによる実践を重視します。
「英語で話し合う」「日常会話を聞き取る」「発表する」など、「出された問題を解く」よりも「主体的に英語を使う」ことに力を入れています。
中学では年間140時間単位、1週間に4コマ(200分)の授業となります。
英語必修化が抱える現状の課題
小学校の早い段階から英語に触れることで、英語に親しむ時間が増え、英語の習得がスムーズになったり多様な文化に触れたりすることが期待されています。
一方、小学校の英語必修化はまだ始まったばかりで、まだまだ課題もあります。
教員の指導力不足
英語必修化に伴い、文部科学省は教員の指導力を高めるための研修を行っています。
しかし、元々多忙な教員が英語の授業準備や研修のために時間を割くのは、簡単ではありません。
実際に現場の教員からは、不安の声が上がっています。
英語での発音や文法に自信のない教員も少なくありません。
英語の専任教師の確保も足りていないのが現状です。
まだ必修化になったばかりということもあり、各小学校で手探りの状態になっています。
本当に英語力が上がるのかという疑問
「早いうちから英語に親しむのが上達への近道」とはいえ、「1週間に1~2コマの授業で効果が期待できるのか」という疑問の声もあります。
日本人が英語を習得するためには2,500時間が必要と言われています(同志社大学稲垣俊史教授の論文より)。
小学校が1コマ45分、中学校が1コマ50分として、義務教育中9年間の英語の授業時間は総計507.5時間となります。
つまり、義務教育で英語の授業を受ける時間は、英語習得の目安となる勉強時間の約20%に相当します。
そして、小学校の英語の授業時間は目安となる勉強時間の約6%です。
小学校の授業は英語に親しむ入口にはなりますが、小学校の授業に期待し過ぎることはできません。
家庭でできる英語教育
小学校英語の必修化に伴い、家庭ではどのような対応をして教育すればいいのかについて紹介します。
目的や目標に応じた家庭教育を行う
小学校の授業だけで英語を習得することはできません。
前述のように、小学校の授業時間は英語を習得するのに必要とされる目安時間の6%程度です。
必修化も始まったばかりなので、現場もやり方を手探りしています。
英語に慣れ親しんでほしい場合
「英語に慣れ親しんでほしい」のであれば、小学生向けのドリルや動画、ラジオ、アプリなどを使って楽しく英語に触れるようにしましょう。
例えばアニメや映画を英語吹き替え版で観て、英語の発音に慣れさせたり、簡単なドリルに1日数枚取り組ませ、ご褒美を与えたりすることで、苦手意識を持つことなく英語に触れることができます。
[家庭での英語学習に関する記事を貼る:未執筆]
地域や時期によっては英語のイベントを定期的に開催していたり、英会話教室の無料体験会のようなものがあったりするので、そういう場に親子で行くのも効果的です。
授業に困らないでほしい場合
「授業に困らないでほしい」と考えているのならば、他の教科と同じように教科書中心の勉強が大切になります。
教科書の英文を音読させたり、授業の内容を家庭で復習したりすると、より身につきやすいです。
小学生の段階では、アルファベットと簡単な日常会話ができれば最低限授業にはついていけます。
1日15分でも家庭で「英語で話す時間」を作ってみましょう。
将来英語が堪能な子になってほしい場合
「英語が将来堪能な子に育ってほしい」と望んでいるのならば、学校任せにせず、英語教室に通わせるなどでフォローしていきましょう。
小学生向けの英会話教室や、英語のみを使用する民間の学童保育なども存在します。
料金はかかりますが、教育費と考えて投資するのも1つの手です。
また、英検や英検Jrなどの検定試験を1つの目標として取り組むことも効果的です。
ただし、子ども本人にやる気が見られない時に、無理に押し付けると英語嫌いになってしまうリスクがあるので気を付けてください。
日本語教育も大切にする
英語だけでなく、母語である日本語も大切にしましょう。
「第二言語のスキルは母語以上にはならない」とされています。
母語である日本語で表現できないことや考えられないことは英語でも同じです。
「とにかく英語を習得しよう!」という考えではなく、会話や授業、読書などを通して日本語や英語以外の科目の習得も大切にしていきましょう。
まとめ|小学校の英語はコミュニケーション重視!
小学校の英語は、3.4年生は成績がつきませんが、5.6年生は教科のため成績がつきます。
主な目的は、知識の詰め込みよりも主体的に英語でコミュニケーションをとれるようになることです。
現状、学校の英語教育では3.4年生は週に1コマ(45分)、5.6年生は週に2コマ(90分)の授業なので、「小学校から英語が必修化」といっても授業だけで英語を堪能にするのは難しいでしょう。
もし英語が堪能な子に育てたいのであれば、英語教室に通わせるなどでフォローしていきましょう。
そうでない場合は、家庭でより英語に親しめる環境を整えていくと英語に対する苦手意識がなくなることが期待できます。
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