中学受験は「親子の受験」と言われるほど子どもと親の関係が大切です。
しかし、中学受験を頑張り過ぎるあまり子どもや母親、あるいは両方が抑うつ感を感じてしまうケースが少なくありません。
抑うつ状態になりやすい環境や抑うつ状態を予防するためにできること、子どもならではの抑うつ状態の兆候などにつて紹介します。
なお、この記事で言及する「抑うつ感」や「抑うつ状態」とは、病気としての本物のうつ病のことではなく、健康な人なら誰でも感じ得る「反応としての気分の落ち込み」の意味で用いています。
中学受験の受験うつについてはこちらをご覧下さい。 続きを見る
中学受験の受験うつ|親が知るべき原因や対策を紹介
中学受験が原因の母親と子どもの抑うつ状態
中学受験は子どもにとって人生初めての大きな試練です。
子どももそれを支える母親も大きなプレッシャーとストレスを抱えてしまいやすく、抑うつ状態に陥るケースは少なくありません。
特に、母親が抑うつ状態になってしまうと子どもに適切な対応ができず、子どもも追い詰められて、両者ともに抑うつ状態になりやすいです。
調子が悪いなと思ったら親子で受診をしてみましょう。
母子で抑うつ感を感じている場合、子どもだけ治療しても母親が不安定だと子どもは再び抑うつ状態になりやすいです。
症状が深刻になってからだと中学受験どころではありません。
中学受験で抑うつ状態になりやすい環境と特徴
中学受験で抑うつ状態になりやすい状況をまとめました。
心当たりがあるのならば、改善の工夫や家族の心身の健康に注意を払いましょう。
親が中学受験に熱を入れすぎている
「中学受験をしなければならない!」「〇〇中学に絶対に通うべし!」と親が中学受験に過剰にエネルギーを注いているのは子どもにとって大きな負担です。
また親自身も中学受験に熱くなっているからこそ「もし失敗したらどうしよう」という不安に苦しみます。
母親があまり中学受験に意義を見いだせていなくても父親が熱を入れていると「子どもや自分が父親に叱られないように」「ダメな母親だとののしられないように」とプレッシャーを感じてしまいます。
逆に父親が中学受験に無関心の場合も母親が「夫は頼りにならない。自分が子どもを成功に導かねば!」と中学受験に熱を入れ、自分も周囲も追い詰めてしまうのです。
家庭がトラブルを抱えている
家庭不和、家族が何かの依存症を抱えているなどのトラブルを抱えていると、中学受験がトドメとなり抑うつ状態に陥りやすいです。
母親は子どもの合格しかよりどころがないので全力を傾け、子どもの成績に一喜一憂をして振り回されます。
子どもは「お母さんを元気にしてあげなければ」と頑張るものの、不安定な母は親に振り回されて潰れたり共依存に陥ったりしてしまうのです。
母親の責任感が強い・頑張り過ぎる
良い家柄の出身で裕福な家庭だったり受験する子の多い地域に住んでいたりする母親に良く見られるパターンです。
「中学受験して当たり前」「合格させて当たり前」という風潮の中で強く責任感を感じたり頑張り過ぎたりしてしまいます。
子どもの勉強をみたり塾弁を作ったり受験校を検討したりなどを完璧にやろうとして、パンクしてしまうのです。
「〇〇でなければならない」と凝り固まった考えに囚われてしまうと視野が狭くなり、追い詰められてしまいます。
もちろん子どもにも悪影響です。
子どもの才能やポテンシャルをほめ過ぎる
中学受験において子どもを煽てて調子に乗せ勉強させるのは常套手段です。
しかし「あなたは才能がある。とってもいい点が取れる。このままどんどん成績は伸びる」と子どもの才能を褒めてポテンシャルを信じ込むような声掛けを繰り返し行っていると、子どもは現実との乖離に苦しむ場合があります。
子どもは「お母さんが褒めてくれるのは嬉しいけれど、実際はいい点が取れないし、これからも取れる気がしない」と悩みつつも「自分はスゴイ」「自分は特別」というプライドが捨てられずにこじらせてしまうのです。
一方母親は「子どもがやる気にならない。私の褒め方が足りないんだ。もっともっと褒めないと」と思い、白々しい言葉を重ねる悪循環になります。
子どもの才能ではなく、行った努力を誉め、実際に取った点数をねぎらいましょう。
子どもの今の状態から目をそらしてはいけません。
中学受験で子どもと母親が抑うつ状態にならないための心がけ
うつを発症するメカニズムは複雑で、「〇〇すればうつにならない」というものはありません。
しかし、うつのリスクを下げる方法はあるので、親子ともども心身の健康に気を配りながら中学受験に臨みましょう。
子どもと程よい距離を保つ
中学受験は親のフォローが重要です。
しかし、子どもは意思のある一人の人間なので「思い通りに動いてくれなくて当たり前」なのを忘れないでください。
親子だからこそ「程よい距離」をとるのは難しいですが、子どもが1人で頑張っている時には見守ってあげましょう。
困っている時や迷っている時に背中を押してあげてください。
子どもの為とは言え、母親は全てを犠牲にしたり諦めたりする必要はありません。
自分の為に時間やお金を使うのも忘れないでください。
適度な距離が子どもの成長には必要です。
母親がすべて勉強をみようとせず、塾や家庭教師にお任せするのもいいでしょう。
宿題や復習をやらずに授業で叱られたり恥をかいたりする体験をすればやがて自分でやるようになります。
中学受験不合格も想定しておく
「合格するぞ!」という意気込みは大切ですが、何があるか分からないのが中学受験です。
不合格の場合もシミュレーションしておきましょう。
子どもにどんな慰めの言葉をかけるか、自分はどう振舞い、どんな手続きが必要なのかについてあらかじめ決めておくと覚悟ができます。
受験にチャレンジするからには合格したほうがいいに決まっていますが、落ちても世界が終わるわけでも命が取られるわけでもありません。
「不合格になったらどうしよう」ではなく、「不合格になったら〇〇すればいい」「△△中学の生活を楽しめばいい」と腹をくくることで必要以上に中学受験にプレッシャーを感じずに済みます。
母親の精神状態が安定していれば子どもも追い詰められません。
中学受験の意味を家庭で話し合う・理解し合う
中学受験をするのが当たり前の家庭や地域だと改めて中学受験について語らない場合も少なくありません。
さらに「偏差値は高ければ高い程いい」という価値観になってしまいがちです。
親は「子どもの為」と思っていても、子どもに伝わらなければ子どもは勉強に身が入りません。
そして、親は分かってくれない子ども苛立ちを感じ、双方にとってストレスになります。
受験する中学にはどんな魅力があるのか、子どもはどんな中学生活を望んでいるのか、本当に〇〇中学でなければダメなのか……親子で話し合い、共通の目標を持ちましょう。
ただし、この話し合いが「子どもを納得させる場」になってはいけません。
子どもの気持ちにも耳を傾けてあげましょう。
いわゆる士業の家系は子どもに後を継がせたいと考えがちですが、それによって子どもの夢や希望を潰すのは許されません。
母親は相談相手やストレスの吐き出し場所を確保する
「母親が中学受験をサポートするのは当たり前、不満なんて言ってはいけない」と考えていると結局は溜め込んだストレスで子どもと自分が参ってしまいます。
友達や塾の先生など弱音を吐いたり相談できたりする場所を作りましょう。
日記もおすすめです。
人に話したり文章にまとめたりすることで冷静になれたり気持ちの整理がつけられたりします。
中学受験は子どもも大変ですが、親も大変なのです。
子どもを支えるためにも母親自身が心身健康でいる工夫と努力をしてください。
罪悪感を抱く必要はありません。
子どもの抑うつ状態の初期症状を見逃さないで!
簡易抑うつ症状尺度(Quick Inventory of Depressive Symptomatology:QIDS-J)はうつ病の診察を受ける1つの判断基準とされています。
しかし、子どもが抑うつ状態になると以下のような症状もみられる場合があります。
- 反抗的
- イライラ・キレる
- 味の濃いものを大量に食べ続ける
- 夜でも目がギンギン
- 成績低下・集中力低下・落ち着きがない
抑うつ状態の症状は食欲不振や過眠、無気力などいわゆる「元気がない状態」をイメージしやすいですが、子どもは「活発に見える」ケースもあります。
一見元気そうであっても「楽しそうに見えない」のならば注意信号です。
そのほか、腹痛、肩こり、頭痛、眼精疲労など体の不調として症状が出る場合もあります。
早めの相談・治療が重要です。専門家に相談しましょう。
まとめ
中学受験をきっかけに母親と子どもがうつを患ってしまわないように注意しましょう。
母親がプレッシャーを強く感じると子どもも追い詰められてしまいます。母親は適度にストレスを発散し、視野が狭くならないようにしましょう。
子どもの抑うつ状態は症状が分かりにくい場合もあるので気を付けてください。